3人のお子さんのママであり、ファイナンシャルプランナーとして活躍中の畠中雅子先生。
この連載では、先生がご自身の育児やさまざまな家族の相談を振り返りながら、ここだから言える、リアルなお金と子育てのアドバイスを伝授します。
赤ちゃんが生まれ、いままで以上にお金がかかるわ…と不安な方へ。お金のヒントを、そして子育ての楽しさを、たっぷりとお届けします!
いきなりですが、みなさんは、“娘どろぼう”という言葉をご存知ですか?
娘どろぼうとは、子育て中の娘が実家に遊びに来るたび冷蔵庫に入っている食材や、ティッシュなどの日用品を根こそぎ(?)持っていってしまう行動。どろぼうといっても親のほうも心得ていて、娘さんが来るのに合わせて、冷蔵庫にギッシリと食材を詰め込んでくれたりします。
おじいちゃんやおばあちゃんにとっては、お孫さんも一緒に遊びに来てくれるわけですから、「娘が来ると、食材をごっそりと持っていかれちゃうのよ」などと言いながら、心の中では遊びに来ることを待ち望んでいたりもします。ある意味では、共犯関係(?)ができあがっているのかもしれませんね。
食材以外にも外食代を払ってくれたり、孫の洋服やおもちゃを買ってくれたり、孫と3世代の旅行費用を出してくれたりと、祖父母のお財布が“大活躍”しているご家庭も多いと思います。3世帯の旅行シーンは私もよく見かけますし、いつもほほ笑ましい光景だなあと感じています。
ところが、生活設計という視点で考えると、見方は少し変わります。実際、お孫さんが小さいときにたくさんの援助をしている祖父母側にお会いしたときには、次のようにアドバイスするようにしています。
「娘さんもお孫さんも、おじいちゃんやおばあちゃんがいろいろと買ってくれれば喜びますよね。お孫さんが喜んだ顔を見るのはうれしいでしょうけれど、今はお子さんたちの家計がそれほど厳しくない時期です。そこで、目先の援助は半分くらいに減らして、減らした分は将来の教育費として貯めておかれてはいかがでしょうか。そして、お孫さんが高校や大学に入学するタイミングで、貯めたお金を渡したほうがお孫さんにとっても記憶に残る援助になると思いますよ」と。
お子さんが小学生くらいまでは、教育費負担が軽いので、貯蓄のしやすい家計に当たります。やりくりに精を出さなくても、なんとなく貯蓄ができてしまう時期ともいえるわけです。
援助をいつまでも続けられるだけの財力がある場合はかまいませんが、お孫さんが高校生や大学生になる頃=資金援助があると助かる時期になると、祖父母側の貯蓄が減っていたり、介護が必要になって子世帯の生活費まで援助できなくなったりするケースはいくらでもあります。本当に援助してほしいときに、祖父母側に余力がなくなっているケースが現実には少なくないのです。
そのように考えますと、お孫さんが小さいときに頑張りすぎず、半分くらいは未来への援助に切り替えてみることをおすすめします。援助を未来に送ることは、教育資金負担が増えて、貯蓄がしづらくなっている家計にとっては、お孫さんが小さいときよりも喜ばれる可能性が高いと思うからです。
おもちゃを買ってあげたとき、「じいじ、ありがとう! 大好き♪」などとほほ笑んでくれる孫の顔を見るのが幸せだと感じる方も少なくないはず。とはいえ、成長したお孫さんがおじいちゃん、おばあちゃんが買ってくれた場面を覚えているとは限りません。
いっぽう、高校や大学の入学費用の一部でも負担してあげれば、その記憶はお孫さんの心に、一生残るケースが多いのではないでしょうか。