はじめに
HELLO!
1980年に2人の娘(3歳と1歳)と一緒にアメリカから日本にやって来た青い目のテリーです!
子育て、食べ物、洋服、生活、季節、習慣、文化・・・日本とアメリカでは違うことばかり!
だけど、いろいろな日本とアメリカの違いのおかげで、とっても面白くて楽しい子育てができました!
外国人のママが少なかった当時の“青い目の子育て奮闘記”をどうぞお楽しみください!
プロフィール
Teri Suzanne テリー・スザーン
元「こどもの城」国際交流部長。作家。切り紙のイラストレーター。声優。日本や韓国、香港、アメリカでの講演や、NHKの番組、青山円形劇場への出演などもこなす。子どものためのバイリンガル教育教材コンサルタントとして『えほんや』『エーゴ旅行社』(iTunesアプリ)の英訳と声優を担当。
A New Year Begins!
あけましておめでとございます! 本年もよろしくお願いします!
Happy New Year Everyone!
今年は馬年ですね。なんでもうまくいくように祈っています!お互いにうまく頑張りましょうね。
ハッピーなお正月の思い出はいっぱいあります。娘たちにとって、お雑煮やお汁粉、おもちは一番の楽しみでした。今でも、お雑煮とお汁粉がないとお正月じゃないとよく言います。
アメリカにはお年玉の習慣がないので、とてもうれしかったようです。「お年玉は何歳までもらえるの?」とよく聞いていました(笑)。娘たちは自分のお年玉を大切に、長い間郵便局に貯金していました。
私自身、習慣や行事のおかげで日本語を覚えることもありました。たとえばおじいちゃんがお正月の前に何度も言う“おおみそか”という言葉。それを聞 いて私は「もしかしたら、お正月の特別な面白いお味噌汁があるのかな~?」…と思っていました! だって「お味噌汁」と「おおみそか」、よく似ているで しょう? 「おおみそか」は特別なお正月の味噌汁ではないと分かったとき、とても残念だと思いました。
子どもたちが小さいころには、大森八幡神社へお参りに連れて行きました。大きくなってからは、年越しそばを食べたあとに電車や地下鉄に乗って、明治神宮や浅草へ行きました。
初めて行ったときには本当にびっくりしました。前も後ろも左も右も、人、人、人!! 人の頭ばかりが川のようにコンソメ状態で並んで、広い境内を亀 さんのような歩き方で前へ前へと進みました。なかなか進まず、一時間以上かかってようやく、神社の階段につきました。おまわりさんもたくさんいました。
何秒間か頭を下げて短くお祈りをして、おさい銭を思いきり投げました! 何時間も並んだのに、最後に何秒かしかあいさつと祈りができなかったので す。いったいなぜそんな状況で並ぶのかなと思いました。もっとよい方法がないのでしょうか? 天国からみている神さまは、にこにこしながら、なにを思って いるのでしょうか。
日本でのお正月の大切さと、アメリカでのクリスマスの大切さは同じように感じます。日本で年賀状をたくさん送るのと同じように、海外ではクリスマス カードを送る習慣があります。お正月は三が日と短いですが、アメリカでのクリスマスは12月いっぱい。日にちは長くても短くても、この休日は大切な、ファ ミリ-のtogetherタイムではないでしょうか。お互いに深い意味のある行事や季節だと思います。
お正月には書き初めもありますね。長女が小学生だったある冬休み、書き初めを書く宿題がありました。お習字は習ってませんでしたが、娘自身が漢字 や、筆で文字を書くことが大好きでした。初めての書き初めを一生懸命練習して、やっと和紙にすてきな字を書きました。親としてとてもうれしかったです。
最後に、名前をたてに書きました。ちょうど、アメリカンスクールから転校してきたころだったので、アメリカ式(名前を先、苗字をあと)に書いたのです。
主人はそれを見て「日本では苗字は先で自分の名前はあとだから、書き直すことになると思うよ」と言いました。
娘の顔色が変わりました。
私は「でも、本人はアメリカ人と日本人だし、大丈夫でしょ? せっかくきれいに書けたんだから、その違いを認めてもらうために、もう一枚新しく書いて、両方持って行ったら?」と言いました。
さて、娘はどちらを選んだでしょうか?
娘は私よりも、日本の学校での自分の立場をよく分かっていました。もう一度新しく、苗字と名前の順に書いて、学校へ持っていったのです。アメリカ人 と日本人として、両方の文化や言葉を持っていても、日本のルールをきちんと守るという義務を理解していたのです。ほかの生徒と違うことをすると目立つか ら、みんなと同じようにするしかないと、わかっていたのですね。
のちに学校で個人面談があり、私は担任の先生にこのことを話しました。
先生は言いました。「あなたのお子さんは正しい道を選びました。ここは日本です。日本での名前の書き方は決まっています」
それを聞いて私は、近くにあった黒板を借りてこう書き、こう言いました。「3+2=5, 2+3=5, 4+1=5, 1+4=5……。先生、一番正しい書き方はどちらでしょうか?」先生の答えはひとつ。「日本だから、ルールはルールです」。
昔の思い出ですが、私も教師としていろいろなことを感じました。今の時代には、国際理解のためにお互いの文化を尊敬しながら、もっと広い心を持つ必 要があるのではないでしょうか。現在日本にも、娘のような子どもや海外から移り住む子どもが増えています。お互いの文化や考え、言葉、主観、違いを認める 必要も大事ではないでしょうか。
両方の国や文化を持っている娘たちを育てながら、私は、国際理解のバランスを考えなければならないと強く感じています。
アメリカでも日本でも、私の前にはいつも、3本の違う道があります。アメリカの道、日本の道、そして、娘のもつ、新しい道です。
子育てをしながらしっかり地に足を着け、心を聞きながら進みたいと思います。一番よい道を選び取るより、道と道との間に、すてきなかけ橋を作らなければならないのではないでしょうか。
違うところも美しいものです。その違いのおかげで、心と心の間に新しいかけ橋が生まれることもあるでしょう。