春です。
やっと桜がかわいらしい、にこにこしたやさしい顔を日本全国に見せ始めました。この一週間でみなさんの気分も変わりますね。冬の寒さが消えて、新しい希望やうれしさが生まれ「もう一年頑張ろう!」という気になります。
桜には、魔法使いのような素晴らしい、人生をpower upする力があると思います。私は、春の東京が大好きです。あちらこちらにも花が咲いています。 駅までの道を歩いていると、右を見ても左を見ても、花がたくさんあります。いろいろな家の前にも、ちいさな植木鉢に小さな花が。色のある、楽しい季節です。

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人間はお花見をしますが、お花も”ME”(私。花を見ている人)を見ているのかな?

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初めて日本で迎えた春には、家族や友達といっしょにお花見をしました。考えてみればそのとき 「お花見に行こう!」と言われても、ピンときませんでした。 なんてことでしょう!
しかし、春に桜が咲くことは、みなさんの楽しみなのだとわかりました。お弁当を作って公園へ行って、びっくりしました。桜の木の下で大きなシートをしい て、みなさんがそこに座って、ビールを飲んだり焼き鳥などを食べたりしていました。桜を見るというより、いろいろな人が騒いだり踊ったり歌ったりしてい て、ほとんどの人は、桜を見ていなかったのです!私は、なぜ「お花見」という言葉があるのかなと不思議に思いました。まだ小さかった娘たちも、やっぱりみ なさんと座って、おいしい食べ物を食べました。とうもろこしや焼きそばなどを買うことも、楽しかったです。楽しいことは楽しかったですが、私は花が大好き なので、じっと桜を見たいという気持ちが強かったのも確かです。それでも同じように座って、みなさんを無視したら失礼になりますから、我慢して、桜よりみ なさんの顔を見ていました。
桜たちは、木の下で騒いでいる人間たちに、何を感じているのでしょうね。

アメリカでは学校は9月から始まりますが、日本では4月から始まりますね。入学式がありますので、親も先生もいろいろ大変ですね。初めて娘たちが大森北保育園に入園したとき、さまざまな「事件」が起こりました。
保育園で、他のお母さんたちと初めて顔合わせをしたときのことです。 先生たちの紹介のあと、いろいろなプリントを配ってくれました。
もちろん、プリントは全部日本語。1981年でしたので、他の外国人の親はいませんでしたし、先生も英語ができませんでした。
日本語のプリントを見て、がんばるしかないと思いましたが、その内容を見てびっくり!子どものためにいろいろなものを作らなければならなかったのです。 また、持ち物の数がすごい! 上履き(中ばき用と外ばき用)、ふとんカバー、シーツ、枕、枕カバー、パジャマ、タオルキット、などなど…。 (実はtowel kitの意味が、全然わかりませんでした!)
そして子どもの名前を別の布地に油性マジックで書き、それぞれのものに縫いつけるのです。自分でシーツなどを縫わなければならない!
さらに、自分の子どものものだとわかるように、目印のように別の布地もつけなければならないのです。また、日本での測るサイズは全部メーターですよね。ア メリカ人の私は、インチの世界しかわかりませんでした。掃除やお皿洗い、かたづけなどが大好きな私ですが、一番苦手なことは、sewing(縫い物)。大 嫌いでした!
おばあちゃんにプリントを見せたら、お手あげでしたので、シーツなどは別の方に作っていただくことにしました。そのとき、私は聖心インターの教員でしたの で、sewingをする時間がなかったのです。娘2人分でしたので、ダブルパンチでした!荷物を全部揃えたら、すごい量になりました。毎週土曜日にシーツ などを持って帰って、洗って、揃えてまた持って行くという生活が始まったのです。

またもうひとつ、日本語のチャレンジが出てきました!それは連絡帳です。まず、その連絡帳のカバーを自分で作らなければなりませんでした。毎晩、そ の連絡帳に書くことはいっぱいありました。たとえば、何を食べさせ、寝る前に何をしましたか? 何時ごろ寝かせましたか?便はありましたか? 気分はどの ようでしたか?そして、「先生へのひとこと」も日本語で書かなければならないのでした。
それだけではなく、朝になってからもまた書きます。何時に起きたか、朝ご飯は何でしたか、便はありましたか?どんな便でしたか? 子どもの気分? 熱? などなど…。

あああああああ!

いつもていねいに細かく書きましたが、2人分でしたのでかなりの時間がかかりました。先生からの手紙もいつもありましたが,先生によっては字が読み にくく、ときどき主人かおばあちゃんに読んでもらいました。日本語で書くことが自分にとって難しかったこともありますが、それだけではなく、私はその習慣 に対して疑問を持ちました。自分たちが夜にやっていることをなぜ説明するのでしょう?私は親なので、家でやることは任せてもらいたかったのです。なぜ、そ んなに細かく書く必要があるのでしょう。私は責任をもってちゃんとやっています。自分たちのprivacyを守ってもらいたい、親として信用してもらいた い、と感じました。

また、先生は毎日連絡帳に手紙も書いてくれました。先生からの手紙はもちろん、うれしいものです。でも、保育園のクラスにはたくさんの子どもがいま す。先生が全部の子どもに手紙を書くには、それだけでたくさんの時間が必要ですよね。いつ書いているのでしょうか? それを書くよりも、その時間を有効に 使って、子どもと遊んで欲しかったと思いました。先生たちは本当にまじめで、とても感謝しています。日本の保育園の先生は大変です。本当に朝早くから夜遅 くまで頑張っています。感謝、感動です。

でもときどき、朝、日本語で書くことができない時がありました。そんなときにはおばあちゃんが私の代わりに書いてくれたのですが、それが本当にシンプルでびっくりしました。
「よく遊びました、よく食べました」
それだけ! 気楽に書いてあるのを見て、なるほどと思いました。やっぱり、私ももっと気楽に考える必要があったのかしら? と感じたのを覚えています。

それから、保育園の生活についてもうひとつ。それは昼寝のことです。日本の保育園では、子どもたちが昼寝するとき、清潔なふとんやカバーなどを使っ て、ちゃんとよい形で寝ますよね。子どもたちは一生懸命遊びますから、昼寝は大事です。また、汗をかくので着替えもします。よい習慣です。しかし、残念な がら現在、日本でのインターの保育園・幼稚園では、日本の保育園のようなよいふとんを使うことも、着替えなども行っていません。本当に薄いマットで寝かせ ているところもあります。日本の保育園には、厚生労働省による厳しいきまりやシステムがありますね。立派だと思います。子どもを日本の保育園にあずけた経 験があって、よかったと思います。
細かいことはたくさんありましたが、それはやっぱり「子どもを守るため」「育てるため」だったからではないでしょうか。生活リズムを合わせて、季節の食べ 物や遊び、習慣などを考えながら、子どもたちのために一生懸命いろいろやってくれる保育園。子どもを預かってもらっている親は幸せです。日本の保育園や幼 稚園の先生たちの一日は。朝早くから夜遅くまで。とっても長い。それなのに給料が少ないと、私は思います。その先生たちのおかげで、日本の子どもたちが一 歩を踏み出すことができるのです。その一歩はとっても大事なもの。先生たちに、もっともっと感謝しなければならないと思います。本当にありがとう! 先生 たちは日本の宝物です!

Thank you!  Have a Happy Spring!