アメリカにも日本と同じように、11月に「感謝の日」があります。お祝いの習慣は違いますが、基本的に感謝をする心は同じではないでしょうか。

小さいころから娘たちに、日本語と英語での感謝の言葉と、感謝をする理由や意味を教えました。プレゼントをいただいたら、必ずお礼の言葉をいうことと、その大切さを説明しました。ただ “ありがとう”の言葉を言うだけでは物足りない。人が親切にしてくれたり、プレゼントをくれたりしたら、感謝の言葉ともうひとことを添える表現が大事、と伝えました。

 

たとえばおもちゃをいただいたら、そのおもちゃを見て、色、形、遊び方、使い方に対しての感謝の気持ちを伝えることが大事です。“これ欲しかった! 青いところが大好きです! うさぎが大好き!”などと自分の気持ちを伝えます。そうすれば、プレゼントをくれた方がもっと幸せになれます。やさしい気持ちで感謝をすれば、プレゼントをくれた方も、そしてもらった方も、ニコニコしながらよい気持ちになるんですね。

 

わが家ではプレゼントをもらったとき、もうひとつルールがありました。それは、もし、感謝の言葉(ありがとう)を忘れたら、もらう権利はないということです。

プレゼントはあたりまえにもらえるものではなく、人の心からの表現のひとつです。感謝をする気持ちがないのなら、その場でプレゼントを返すべきでしょう。厳しいと思うかもしれませんが、娘たちはいつも気持ち良く、心をこめて、感謝の言葉を楽しく言っていました。

 

アメリカには、二つの MAGIC WORDS(魔法の言葉)があります。それは 「PLEASE」(お願いします)と「THANK YOU」(ありがとう)です。

親は子どもによく“魔法の言葉を忘れないでね”といいます。だから子どもたちは自然に、美しい感謝の言葉を覚えるのです。

1987年、娘たちが10歳と8歳だったころに、私たち親子は東京・日本橋にある高島屋の子ども用品フロアの全面リニューアル企画に協力しました。当時、こうした子ども用品フロアの企画は日本全国のデパートでも初めての試みでした。新しいフロアは「スペース5」と名づけられ、全体のデザインコンセプトは「MAGIC WORDS」としました。宇宙に住む2人の子どもShinyとSparkle、そしてかわいい動物の友達Speedyが、大切な「MAGIC WORDS」を探しにいくというオリジナルストーリーを作ったのです。そこで伝えたかったのは、思いやりと感謝の気持ちをもって、感謝の言葉を大事にすることでした。

フロアには毎日、私が作詞をし、娘たちが歌ったバイリンガルの「MAGIC WORDS」という曲が流れました。私たちの希望は、その場に訪れた親子がそのやさしい歌や言葉を聞きながら買い物をして、よい思い出を作り、その歌を聞くことで自然とその言葉が心のなかに届くことでした。今振り返れば、娘たちといっしょに親子として、自分たちにとっても大事な感謝の言葉を他の親子に伝えることは、とてもうれしいことでした。

 

「MAGIC WORDS」は、どんな人の人生にも、とても大切な言葉です。

娘たちが小さいころ、よくやった遊びがあります。家から出かけるときに子どもに向かって、やさしい笑顔でこう聞くのです。

「MAGIC WORDS持ってる? ポケットの中に忘れないように入れたかな? なくさないように大事にして。そして必要なときには出してね!」

私は娘たちをこのように育てました。娘たちは今でもポケットの中にその美しい、やさしいことばを持ち、必要なときに使っています。

 

あなたの家にペットはいますか?

金魚? 猫? 犬? ハムスター? 亀? 小鳥? うさぎ? 豚? とかげ? カエル? カブト虫? ペットに感謝することも大事です。

娘たちが小さいとき、いろいろなペットを育てました。娘たちはいつも虫などをよく家に持って帰ってきました。お祭りがあると必ず金魚すくいをして、金魚を持って帰りました。夏になるとカブト虫やクワガタを見つけたり、幼稚園でうさぎと遊んだり、友達の家であひる、やどがり、亀と遊んだりしました。私の子どものころにも、猫、犬、鳥や蛇などもたくさんいましたので、家に動物がいることはあたりまえだと思っていました。

 

しかし、日本では住んでいる環境によって、犬や猫が住むことを許されない場合があります。街によっては広い庭も少なく、なかなか犬や猫を育てることが厳しいようです。

娘たちが小学校へ通うようになったころ、東京・駒沢公園の近くの小さな家を借りました。そこで初めて、犬を飼いました。そのときから、どこへ引っ越しをしても必ず、犬を飼うことがOKである家やアパートを探すようになりました。

子どもにとって、動物の世話は非常に重要なことです。生き物を大事にすることで、子どもが素直になります。決まった時間にえさをあげること、散歩すること、掃除すること、水をあげること、そして愛情をかけること…。金魚でもハムスターでも、生き物の世話は人生の中の大切な勉強です。

動物を育てると、生き物の“Cycle of Life”ライフサイクルを自然に感じることができます。自然に自分の目で見て、自分の手で触ります。動物が亡くなる苦しみや、動物が病気になる心配など、素晴らしい勉強になります。また、その猫か犬かハムスターが、赤ちゃんを産む奇跡を体験させてくれることもあります。本当に素晴らしいことです。

 

娘たちが小さいころ、日本でもアメリカでも、よく動物園へ連れていきました。小さな子たちのためのふれあい動物園「Petting Zoo」で、自分の手で、実際にうさぎ、あひる、やぎ、馬、羊、亀などをさわりました。いい匂い、そしてくさい匂いとの出会いもたくさんありました! 羽根や毛皮、2本足、4本足の動物、長い鼻、短い鼻の動物などをみて、とても勉強になりました。檻の中にいる、大きな動物や怖い動物、毒を持つ動物もたくさん見ました。

娘たちは象もきりんも大好きでした。 必ず、クレヨンで動物を描いてくれました。象やトラ、クマ、キリンなどはかわいかったですが、今考えてみると、一部ではかわいそうなこともあったでしょう。

現在の動物の状況を見ると、動物たちにとって小さなスペースに生きていることが本当に良いのかどうか、疑問があります。娘たちも同じでした。

 

現在、15分おきにアフリカで象が象牙のために殺されています。年間ですごい数にのぼっています。サイは角のため、毎日2頭の命が奪われています。今から10年以内には、象とサイが絶滅する恐れがあるかもしれません。

みなさんがお子さんを動物園に連れていくときには、ぜひ、命の大切さを話してあげてください。象やサイ、キリンなどを見るのは楽しいと思いますが、これからの子どもが見られるために、それらの動物を広いところで育てることも必要です。小さいときに娘たちといっしょに動物園へ行くことは本当に楽しかったですが、当時と今では状況が変わりました。とても残念です。

 

娘たちは生き物のおかげで、よい子に育ったと思います。日本で、娘たちはいろいろな犬を育てました。当時、ipadやiphoneはありませんでしたが、写真やビデオをたくさん撮りました。今なら、写真を撮ってすぐにFACEBOOKなどに載せることもすぐできますが、私たちにも、すばらしい思い出は山ほどあります。泣きながら、笑いながら、写真などを見ればひとつひとつの思い出がよみがえってきます。子どもが大きくなっても、すばらしい親子のコミュニケーションになります。家族の大事な歴史にもなるでしょう。

 

今週、娘たちといっしょに15年間、ずっとそばで育ち、家族が愛したラブラドールのカイリちゃんが突然、天国へ旅立ちました。私たちにとって、悲しい、さみしい、胸がいたむことでした。

親子にとってかけがえのない、宝物の思い出があります。カイリのおかげで、私たち家族の間の絆が強くなりました。カイリには、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとう、カイリ。本当にありがとう。

人間と動物の間には、心の絆ができます。特に、ペットと家族の心のつながりは、とても強いと思います。ペットがいるから家族が元気になったり、ハッピーになったりするのです。ペットのやさしい心は、宝石よりも輝いています。親も子も、家族のひとりひとりが、その輝きを感じて幸せになるのではないでしょうか。

私たちのカイリが天国に旅立ってしまったことは非常にさみしいですが、カイリとともに過ごした15年間は、家族の永遠の思い出になりました。そしてそれは、大切な絆となることでしょう。

teri11