はなからはなしをしましょう!

SPRING
 

春。新しい気分の季節。大好きな、美しい花がいっぱい咲いています。私の心の中では“季節の色”と言えば、日本の春は「ピンク」。それはきっと桜の存在が大きいからでしょうね。桜は優しくて素直な、なんとも言えないピンク色です。
今いるカリフォルニア州の春の色は「紫」です。どこへ行っても紫の気分!今まではピンク色の春があたりまえだったので、紫色ばかりの春はとても不思議な気がします。この町に一番多くみられるのはジャカランダ(Jacaranda tree)と「ナイルの百合」と呼ばれているアガパンサス(Lily of the Nile /Agapanthus plant)です。桜は優しくて生き生きしている感じがしますが、ジャカランダやナイルの百合は落ち着いた感じがします。花の色によって、人の気分も変わるのではないでしょうか。

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紫がとても落ち着く「ナイルの百合」

季節がはっきりしている日本にいると、自然の流れが感じられます。自分たちの経験や思い出によって、ある花を見れば季節が感じられますし、いろいろな思い出も浮かんできます。
私たちはいつも、それぞれの季節の花が咲くことを楽しみました。山や海を歩きながら、電車や乗り物に乗りながら、必ずまわりにある植物や花をみて、感動しながら会話をしました。咲いている花たちを見ることは、その日を生きるビタミンであり、ハッピーな気分になりました。町のお花屋さんでも、おもしろい形やきれいな色の花を探しては、いろいろな話をしました。考えてみれば、まさに花は会話を咲かせる大切な「お話の種」なんですね。花や植物が大好きな私たちにとって大切な、元気になれる時間でした。

私たち家族の季節の花の思い出は、春は桜、藤、菜の花、椿、つつじ。夏は朝顔、花菖蒲、蓮、紫陽花、ヒマワリ。秋はコスモス、パンシー、菊。冬は水仙、梅、プリムラでした。ほかの方とは少し違うかもしれませんが、この季節の花たちが、私たちの一番楽しい思い出でした。もちろん、花の種類はもっともっとたくさんありますが、思い出の花は一部だけです!
東京に行くと、あちらこちらに花、花、花。一年中咲いています。恵比寿駅からガーデンプレイスへつながるスカイウォークのエスカレーターの両側にはいつも、とても素敵な季節の花や植木鉢がたくさん置いてあります。仕事の帰りにスカイウォークを通り、花をみると、疲れがふき飛んでいったものです。花たちに「ありがとう!」、花の手入れをしている方々にも「本当にありがとう!」と伝えたいです。
恵比寿ガーデンプレイスはいつも花がいっぱいで美しいです。ぐるりと回ってゆっくり散歩すると、気分転換もできます。花がたくさんあるのは恵比寿だけではなく、他の町でも店の前や歩道、公園、駅、学校などなど、いつもどこにでも花が咲いていました。


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恵比寿ガーデンプレイスに咲くたくさんの花・花・花!

赤ちゃんを抱きながらでも、ベビーカーを押しながらでも、親子が外へ出かけて素敵な花を見たときには、たとえまだ赤ちゃんでも声をかけて、いっしょに花を楽しんでごらんなさい。子どもが感性豊かに育つためにも、親が感動することはとても重要です。男の子でも女の子でも、感動を体験すればもっと素直な優しい心が育つのではないでしょうか。
駅やバス停に向かうときに通る家の前や、階段の上、玄関などには、いつもかわいい花や植木鉢を見かけました。「かわいいね!」「きれいな色ね。お家でも植えてみたいね!」というようなことをよく話しました。また、花だけではなく、葉っぱについても話しました。葉っぱにはさまざまな大きさや色、形があり、その違いを見るだけでもおもしろいし、勉強にもなります。娘といっしょに歩いたときにも、葉っぱの発見はたくさんありました。自然のデザインはすばらしいです。
花によっては咲く時期はわずか。その時間を大事にすることで、次の年の季節はもっともっと楽しみになりました。


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子どもと歩く時はいつも面白い葉っぱをさがしました。
たとえば、綺麗な線たくさんあるこの葉っぱは子どもが絵を描くときのアイデアになります!

娘たちが子どもだったころにはまだ、携帯やメール、SNSなどは今のようにさかんに普及してはいませんでした。すばらしいテクノロジーですが、娘の小さいころにはほとんどなかったおかげで、娘の目を見ながら会話をする機会が多かったですね。それが自然で楽しく、おもしろかったです。当時の娘の発言や交わした会話は、思い出として今でも心のなかに残っています。歩きながら、乗り物に乗りながら、よく話をしました。それは宝物のような、うれしい時間でした。

現在は、道を歩くときや乗り物に乗るときの親子の姿がだいぶ変わりました。携帯は本当に便利で、ドンドン写真を撮ったりメールしたりすることができますが、それとは逆に親子の会話はだんだん少なくなっているような気がします。親は電車に乗ったとき、メールを送受信したり、いろいろなことを検索したり、携帯を中心に忙しく行動することが多く見られます。
今の時代は、昔のようには元に戻りません。戻ることはなく、もっと前へ前へと時代は進んでいきます。今ここにある状況や状態は、確かに今起こっていることですが、このまま進んで行ってしまうと、それは現在の親とこれから親になる方にとって、とても大きな家族や親子へのチャレンジとなるのではないでしょうか。つまり、昔のように人間と人間、親と子どもの目と目を合わせた会話が少なくなれば、これからの時代にどのように問題を解決することができるのでしょうか? どのように親子のコミュニケーションが図れるのでしょうか?
たとえば、電車に乗る時には親子が同じ携帯を見ながら、おもしろいことを検索してみるとか…? いっしょに同じ携帯やタブレットなどを使うと会話はできるのでしょうか? とにかく、自分の家族や子どもが犠牲にならないよう、新しい使い方を考えることは必要ではないかと思います。
インターネットや携帯、タブレットのおかげで確かに世界は狭くなりました。いろいろな違う国の人や場所、考えなどとの出会いがより手元に、近くなったと思います。ただ、自分の世界が広がったかわりに、人間と人間が向き合って、自分の話をする会話力が不器用にならないよう、クリエイティブな方法を考える必要はあると思います。

あなたの、季節ごとの思い出の花はなんですか? お子さんは? あなたにとっての季節の“色”は何色でしょうか? お子さんのは?
庭があれば、お子さんと花を植えるといいですね。いっしょにその新しい命の登場や成長を楽しめると思います。庭がなくても、植木鉢に花を植えて自分たちの季節の色を選んでみると楽しいですよ。
今、もしくはこれから、子どもたちは幼稚園や保育園に入園することでしょう。先生たちは、子どもたちの成長するために本当に頑張っています。花や野菜、植物などを子どもといっしょに、また子どものために植えたりしています。
私の娘たちは日本の保育園にいる間、毎日遊び場へ出て、周りにあった花をたくさん楽しみました。日本の保育園や幼稚園はすごいと思います。娘たちは保育園にいる間に、季節の花や植物を見たり植えたり、さわったりかんだりしました。おかげで日本の心や文化、色を自然に覚えました。日本の保育園や幼稚園に感謝します。感性豊かに育てるために、こどもたちのことを本当に考えて、自然な生き物と触れ合うこと、感動することの経験を与えてくれました。
親たちも、先生たちばかりに任せるのではなく、自分の子どもを感性豊かに育てるために、携帯やタブレットなどをときどき脇に置いて、お子さんといっしょに自然の美しいものや色、におい、花や葉っぱや木、植物などを見て、さわって、育って、感動してほしいと思います。そうすればお互いに優しい、素直な気持ちも生まれてくることでしょう。

はなからはなしをしましょうね!


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