はじめに
HELLO!
1980年に2人の娘(3歳と1歳)と一緒にアメリカから日本にやって来た青い目のテリーです!
子育て、食べ物、洋服、生活、季節、習慣、文化・・・日本とアメリカでは違うことばかり!
だけど、いろいろな日本とアメリカの違いのおかげで、とっても面白くて楽しい子育てができました!
外国人のママが少なかった当時の“青い目の子育て奮闘記”をどうぞお楽しみください!
プロフィール
Teri Suzanne テリー・スザーン
元「こどもの城」国際交流部長。作家。切り紙のイラストレーター。声優。日本や韓国、香港、アメリカでの講演や、NHKの番組、青山円形劇場への出演などもこなす。子どものためのバイリンガル教育教材コンサルタントとして『えほんや』『エーゴ旅行社』(iTunesアプリ)の英訳と声優を担当。
「蝶」EXCITING!な親子の思い出
さあ、秋の始まりです
夏が終わり、9月になりました。秋に向けて、幼稚園や保育園、学校などの活動がだんだん増え、忙しくなりますね。夏のまぶしくて明るい、太陽の力強さは、大きなひまわりと同じように感じます。
夏の最後のエネルギーは「ひまわり」です。以前、ひまわりアートの指導のために28歳になった次女といっしょに沖縄へ行き、多くの保育園を訪ねました。各園で60~100人ほどの3歳前後の子どもたちと、折り紙をちぎったり切ったりしながら、すばらしいひまわりの工作を作りました。本当に楽しかったです。とても蒸し暑かったですが、子どもたちのニコニコの顔を見て、暑さを感じなかったくらい! また、そのアート活動を娘といっしょにできたことは、私たち親子にとって、大切な思い出の時間となりました。
子どもの成長はあっというま!
この記事を読んでいるママとパパのお子さんは、きっとまだ小さいでしょう。そのため、もしかしたら時間はゆっくり流れると思っているかもしれませんが、実はそんなにゆっくりではありません。知らないうちに子どもは大きくなります。それもかなり早いペースで!
ハイハイから、初めて一歩一歩、よちよち歩き出すお子さんは、あっというまに運動会で思いっきり走る子どもになります。時間の流れは思ったより早いです。
子育ては、子どもが生まれたら最後、ずっとずっと続きます。お子さんの年齢が上がっていくと、お互いにさまざまな、いいことや悲しいこと、おもしろいこと、驚くようなことがいっぱい出てきます。いろいろなことを経験し、乗り越えていくことで、親子はもっといい関係になります。
お子さんが大きくなっても、家族の絆は消えません。子どもが親の力になり、ときには親が子どもの力になることもあるのではないでしょうか。楽しい宝物のような思い出は永遠に残るでしょう。子どもが学校を卒業して社会人になったり、結婚したり、また、赤ちゃんを産むこともあります。親や親子のライフサイクルは永遠に続くものです。とても幸せなサイクルではないでしょうか。
オオカバマダラとの出会い
そして実は、子育ての思い出や、親子で楽しんだり学んだりを経験する時間は、子どもたちが成人した今でもたくさんあります。この夏、もうすぐ35歳になる娘といっしょに、とても不思議な、すばらしい体験をしました。私たち親子は大人ですが、ある小さな命のおかげで、お互い子どものころのワクワクする気持ちを思い出しました。それはオオカバマダラ(Monarch Butterfly)という蝶の幼虫とさなぎとの出会いでした。
ある日、庭木に水をかけるためのホースを買いに行きました。その店の前に、milkweedと呼ばれる、茎などを切ると白い液を出す植物(トウワタ)がたくさん置いてありました。その日は、「ひとつを買ったら、もうひとつは無料!」という特別セールだったのです。
このあたりには、とても素敵なオオカバマダラがたくさん生息しているのです。母の家の近所には、この蝶を育てている方もたくさんいます。オオカバマダラの食草であるこの植物を買えば、うちの庭にもたくさんの蝶がたずねてきてくれると思い、買って帰りました。とても楽しみでした! その植物がまさか、私たちの日常生活に大きな影響を与えるとは思いませんでした。
今振り返ると、娘たちを産み、母になり、娘たちを大事に育ててきた気持ちとよく似ているなと感じます。子どもが生まれたら、その子を守ること、育てること、愛することは親の務めであり、親の責任、親の喜びです。
もちろん人間の赤ちゃんと蝶の赤ちゃんはだいぶ違いますが、考えてみれば命は命。小さくても大切な命です。
実は現在、オオカバマダラの食草であるトウワタは世界中からだんだん消えていっています。新しい建物を建てるために自然の植物がなくなり、蝶の大好物の植物までなくなってしまうのです。そのためオオカバマダラは絶滅危惧種になりつつあります。ですから多くの人は、蝶を増やすためにその大切な植物をどんどん植え、育てています。
とはいえ私たちは、まさか蝶を育てることになるとは思いませんでした。娘とインターネットで検索し、いろいろ調べてみたところ、びっくりしたのは、私たちの植物は蝶を呼ぶだけではなく、そのトウワタに、蝶の赤ちゃんが生まれる可能性が高いこと。蝶はその葉っぱに止まり、本当に小さな、白い卵を産んだのです。
その卵から、私たち親子の蝶の大冒険が始まりました! いっしょにその卵を大事にした日々と、小さな幼虫が最後に美しい蝶になるまでの思い出を話そうと思います。
トウワタに産みつけられた卵と、小さな幼虫。
幼虫のお世話はまるで、赤ちゃんのお世話のよう!
卵が産みつけられた葉っぱや、葉っぱにいた小さな幼虫を、まず、プラスチックの容器の中の湿らせたペーパータオルの上に置きました。しばらく待つと葉っぱに穴ができて、その幼虫(caterpillar)が大きくなるために、新しい葉っぱをあてがう必要が出てきます。幼虫は目の前で変身をくり返し、だんだんと大きくなります。色もとても綺麗です。黄色、黒、白のストライプも出てきて、大変美しいです。
大きくなると、すぐに葉っぱを食べてしまいます。食べると黒いウンチも出ますから毎日その黒いウンチを捨てないといけないし、新しい葉っぱも与えなければなりません。
考えてみれば人間の赤ちゃんと同じですね。オムツを毎日何回も取りかえたり、一人ではミルクを飲めない赤ちゃんのために、親は一所懸命ミルクなどを与える必要があります。赤ちゃんが忙しくなると、親の仕事も増えるのです!
やがてなんと! 知らないうちに、40匹近くの幼虫になりました。幼虫のナーサリー(託児所)が必要になってきたのです。娘といっしょに急いで、幼虫を育てるための入れ物を3個買いに行きました。それから葉っぱが足りなくなってきたので、新しい植物も買うことにしました。こんなに忙しくなるとは…ビックリでした! 母の気分に戻った感じ。娘もビックリしていました。それから幼虫を小・中・大のサイズで分け、サイズごとに別の入れ物に入れました。大変おもしろかったですが、時間も結構かかりました。
「もしもしあのね」ではなく、「虫、虫あのね!」でした!
幼虫たちは食いしんぼう!
寝る前には必ず、新しい葉っぱをたくさん入れました。葉っぱを入れる前にはまず、一枚一枚の葉っぱをよく見て、卵があるかどうか、新しい幼虫がいるかどうか、また危険なクモや他の虫がいないかどうかをチェックしました。朝になったら、まったく葉っぱがないこともありました。幼虫は結構おもしろく、娘と観察しながら笑い合っていました。
2週間ぐらいすると、大きくなった幼虫がすごい勢いで一気にたくさんの葉っぱを食べ、しばらく休憩をします。それから、入れ物の壁をゆっくり登っていきます。一番上のふたまで登って、しばらくの間じっとしているように見えましたが、実はその間にからだからクモの糸のような薄いフィルムを出していたのです。
1~2日の間に、アルファベットの「J」のような形にぶら下がりました。2日間の間に美しい緑色のさなぎに変身するのです。不思議な銀色のマークもいっぱいありました。あの忙しい、食いしんぼうのストライプのある幼虫がここんなふうになるなんて! 自然の奇跡だと感じました。
アルファベットの「J」がいっぱい!
その日から10~12日ぐらい経つと、美しいオオカバマダラが生まれます。しかし今回、ひとつの入れ物のふたに約12~15ものさなぎがぶら下がっていて、とても混んでいる状態でした。安全な部屋がないと、クモが現れる恐れがあります。そこで、娘といっしょに別のナーサリーを作りました!
細長いカメラの三脚が入っていた空のダンボールがあったので、左右の長い窓を切り、その穴に薄いネットを貼りました。それから太い2本のひもをぶら下げました。そのひもにさなぎをひとつずつ、小さな木でできた洗濯バサミでゆっくりとていねいに止めていきました。大変な仕事でした。
新しい「託児所」も大混雑。でも快適そう!?
娘がピンセットを持って、ゆっくりとした動きでさなぎの周りにある細いフィルムをとって、そのあとは待つだけ。やっと終わったー! と思ったら、植物にまた新い幼虫を発見…。大変! 家族が増えると困ります!
今週、その美しい緑色のさなぎが黒くなりました。のぞきこんでみると、オオカバマダラのオレンジ色の羽が見えます。娘といっしょにイスにかけて、オオカバマダラの生まれるところをじっと観察しました。2人とも感動して、「やっぱり自然の力はすばらしい。奇跡だ」と思いました。蝶が生まれたら、羽がだんだん上に上がっていきます。時々、うまくさなぎから出られないとか、羽がまっすぐにならないこともあります。ひとつひとつが無事に生まれるか、本当に心配でした。
その蝶たちの羽が乾き、私たちの指に乗ると本当に感動します。やっと離すことができます。わたしたちの手に乗せ、しばらく待つと、蝶の力で飛び上がって、風に乗って、長い旅に出ます。悲しい別れと同時に、初めての時は私たちの目から喜びの涙が。「やっと無事に飛んだ、よかった!」という感動がありました。
さなぎ。
生まれた瞬間!
大人になっても、親子の思い出を紡いで
この9月に娘は35歳になります。今回、この蝶の話をしたい理由がありました。幼虫から蝶になるまで育てたことで、昔、自分が初めて親になったときの思い出がたくさん浮かんできました。子育てとは、お互いの永遠の経験であり、体験、学ぶこと、感じることだと思います。
今回私たちは大人として、自然の奇跡を見ました。人によって、幼虫を育てることは子育てをすることと同じ。それは命を預かること、命を守ること、命を育てることの大切さです。小さな命でも大事なのです。
親になる前、自分の日常生活は簡単でした。自分の時間は自分のものであり、好きなことは好きな時間にできます。好きなものを作って食べ、飲んでいました。しかし、親になれば、自分の時間は少なくなります。特に初めの時期には、今までゆっくり寝ることができていた自分が、赤ちゃんを産むと寝られる時間もかなり減ってきてしまい、寝不足になります。
赤ちゃんがいる。その命をまず守り、大事にすることは一番重要です。赤ちゃんは一人で何もできないから、親は頑張って、やらなければならないのです。大変な責任ですが、その代わり、すばらしく大きな喜びがあります。自分の手、自分の心で小さな命を育てることは、本当に奇跡です。
今回、植物を買ったら、蝶がどんどんうちの庭を訪ねて、見る楽しみだけがあると想像していました。しかし、卵を育てることに決めたら、心は、見るだけよりも責任を持って、命を育てる方向になっていきました。振り返ると本当に大変なことでした。時間もお金もかかりました。しかし、その経験のおかげで、大人になっても力を合わせて、今までにない親子の大切な思い出ができたのです。
指に乗せると感動します!
親子で「心を育てる」ことは、いつまでもできます。若いママとパパたちの思い出作りはこれからです。ずっとずっと長い間、楽しい思い出ができることでしょう。
子どもが大きくなって、蝶のようにいつか自分の羽を伸ばして、家から出て行くこともあるでしょう。でもまた家に帰ってきて、お互いに新しい思い出ができるかもしれません。
今回娘といっしょに、50もの新しい命を育てました。蝶たちが空に向かうとき、私たちはお互いにニコニコ、笑顔でした。
2人にとって宝物のような、親子のハッピーな思い出となりました。