4年間ありがとう!

4年近くもの長い間、この連載を続けてきました。おかげさまでみなさんと出会うことができました。心からありがとうございます。
娘たちの思い出や家族の思い出、アメリカでのこと…。日本に住んでいたころの子育ての思い出を紹介しながら、今までの人生を振り返り、やっぱり親になってよかったと強く感じました。子育てをしたおかげで、私自身の考えや気持ち、価値観が成長したと思います。親は子どもを育てながら、子どもに育てられる部分も間違いなくあるのではないでしょうか。
この連載の最初のころには、切り紙でいろいろ頑張って楽しく作りました。しばらく経つと、親として、娘を育てたときの実際の写真が大事だと感じました。昔撮った家族の写真はたくさんのダンボールの中にあり、探すのは大変でしたが楽しかったです。写真は本当に大事な人生の日記です。デジタルでもいいので、思い出や記録のために、どんどん撮ってください。
今月は最終回になります。どんな内容にするか、何回も考えました。今まで4年間、私の40年間の子育てを振り返ることができ、親として幸せでした。娘たちが大人になった今も幸せです。最終回はやはり少し悲しく、みなさんとお別れするのはつらいですか、最後だからこそ、子育てについて伝えたいことはまだまだいっぱいあります。

 



私と娘たち。

 

人生を変えた子育て
子育ては面倒なことではありません。楽しいことです。奇跡です。かけがえのない宝物です。お子さんがいるから、あなたの人生が変わります。毎日、虹がかかっているような生活です。
子どもが生まれたばかりのころは、寝る時間や自分たちの時間がかなり少なくなります。夜中に泣く。熱も出す。風邪もひく。眠らないこともある。不安や心配ごとが増える時もあるでしょう。でもその代わり、お子さんの笑い声、キラキラ笑っているお目目。とても小さな手と足。また、赤ちゃんの甘いにおい。初めて言葉を言うこと。初めてしっかり座れること。初めてハイハイすること。初めて歩くこと。初めて本当の食べ物を食べること。初めてママやパパの名前を言うこと…などなど、毎日毎日、大きな、それから小さな奇跡がたくさんたくさん目の前に起こります。
親になる前のことを覚えていますか? 楽しいことも嫌なこともあったでしょう。今、親になり、自分の経験したことで絶対お子さんにもしてあげたいこと、逆に絶対やらないこともあるでしょう。家族との日々を思い出すと、親のおかげ、またはおじいちゃんやおばあちゃんのおかげで、子育てのいろいろなヒントや力をもらえたのではないでしょうか。

 

家族のいちばんの思い出は?

この3ヶ月の間、私たちの家族はいろいろと緊急なことに遭遇しています。私の母は91歳になりました。からだはいろいろな病気でだいぶ弱っています。この3ヶ月の間、ERへ6回行き、3回入院しました。先月弟は2回目の心臓発作を起こし、4本のステントを入れることになりました。また、1月に姉が急に病気で天国へ旅立ちました。現在母はリハビリセンターにいますが、今週やっと家に戻ります。ホスピスの形になります。母はだいぶやせて、昔の生き生きした母とは様子が変わっています。昔のように戻って欲しい気持ちはいっぱいですが、人生は前へ前へ流れます。戻ることはありません。
私が小さかったころ大好きだったのは、母が絵本を読んでくれた時間でした。
私と姉、そして弟は、母の優しい声を聞きながら、素直な気持ちで本に描かれた別の世界へ飛び込み、ドキドキしていました。
あなたの、お母さんとの一番の思い出はどんなことですか?家族の人生の道はいろいろとありますが、お互いに愛し合い、力を合わせれば、大変な時期も乗り越えることができるでしょう。私は、母の愛でここまでこられました。本当に感謝しています。

 



私と母。
まさに「赤ちゃんとママ」ですね(笑)

 



父と母と私。

 

なつかしいお弁当
この最後の記事のために、娘たちに思い出を聞きました。自分としては、一生懸命頑張って子育てをしたつもりですが、成功や失敗もしたと思います。結婚したとき、シングルマザーになったとき、主人が亡くなったとき…さまざまなことが起こりましたが、一番プライオリティが高く、一番守るべき、愛するべきなのは子どもです。親として産んだ責任もありますし、子どもの命を守ることは親の務めです。
娘たちの返事で、私がいちばんうれしかったのは“you loved us a lot”.
日本語で言えば「私たちはものすごく愛されました」。それは本当のことで、今でも娘たちは私の宝物です。小さい時にはお弁当もたくさん作りました。昔とちがい、今はあまり料理は好きではありません。しかし娘たちは、昔のお弁当をよく覚えていました。いつも小さなメッセージを入れ、ご飯やおむすびの上にハサミでいろいろな形や動物の顔などに切ったのりをのせました。娘は、私のcrazyお弁当が大好き!と言いました。今はのりをパンチするための道具があるので、どんな形でも簡単にできますが、そのころにおもしろいお弁当を作るのは、娘にとっても私にとっても本当に楽しいことでした。娘のためにニコニコしながらお弁当を作って、娘はニコニコしながら食べました。それは、親子の愛のcommunicationでした。
私たちは「マンザイ」の親子でした。電車に乗りながらも、いつもおもしろいゲームを考えてやっていました。
たとえば駅の名前や広告を見ながらだじゃれを考えたり、変な言葉を作って会話したりしました。隣の方がその会話を聞いてびっくりすることも(笑)。聞いたことのない言葉でしたから、あの親子はどこの国の人たち?と思われたのでしょう。

 



ハロウィンのイベントにて。
いつも笑っていました。家の中ではよく歌いました。あるとき、楽しくなってきてつい大声を出し、隣の家の方から文句を言われたりしました。お風呂の中や、歩きながらでも歌っていました。娘たちの誕生日のケーキを作ることは本当に楽しかったです。アメリカでは昔からケーキミックスを売っているので、簡単に作れました。味はバニラ、チョコレート、レモン、いちごしかなかったため、いつもレモンやバニラのミックスを買って少しずつ分け、食紅を混ぜてカラフルなレインボーケーキを作りました。外側がチョコレートで包まれていても、切るとびっくりするケーキです。今はアメリカでもレインボー色のミックスを販売していますが、自分で好きな色を作るのがとても楽しかったです。たとえば、まゆかのケーキは、本人が好きな青色のグラデーション。くにみは年齢によって好きな色が変わっていたので、毎年色を変えました。ケーキの中の色だけでなく、ケーキの形(動物、人形など)も工夫しました。
くにみの結婚式では、パーティーのために、階段のようなケーキも作りました。各階段にそれぞれテーマを設定しました。サッカーをするだんなさまのためにサッカーフィールドを作り、娘のためには海の世界、アメが好きなふたりのためにアメの階段…などなど。作りながら、娘の小さいころを思い出していました。

 

日本とアメリカの橋渡し役を

娘たちが産まれ、私の人生は変わりました。ふたりのおかげで私は素直になり、忍耐を覚え、前よりももっともっと、優しい人間になりました。娘の考えや話を聞きながら、自分の考えが変わったこともありました。娘たちが日本人とアメリカ人としてのからだと、それぞれの文化を持つことで、私も今まで知らなかった世界を経験することができました。
娘は娘です。ハーフ、混血、ミックスではありません。からだの中に日本とアメリカの血と文化、歴史、言葉、考え、心があります。残念ながら、アメリカに行っても完璧なアメリカ人として認められることは少ないし、日本で日本人として認められることも少ないでしょう。今は娘のような子どもが増えています。そういう子どもたちを〇〇人と決めるより、世の中の人間として認めてほしいと思います。考えてみれば、お互いの国の間の、理解を深めるための大切な橋渡し役(bridge)になりうるのです。厳しいこともあると思いますが、日本もアメリカも大好きならばそれでいい。子どもたちには、プライド(両方の国の血、文化、言葉、知恵と自分自身のアイデンティティに対する)、感謝の気持ち、尊敬する気持ち、それから自分に自信を持ってほしいです。

 

子どもへの贈り物はrootsとwings

私は親として、娘を守りサポートし、愛する気持ちは変わりません。小さい時から自分で頑張ってきた娘たちには、可能性がたくさんあります。夢に向かって自分を信じることは大切だと育ててきました。以前、このコーナーに書いたことがあると思いますが、子どもが産まれたら、親としてふたつ、“贈り物”を贈ります。それは、rootsとwingsです。rootsは自分たちの家庭のしっかりした基礎。価値観やマナー、責任感、優しい心、尊敬や感謝する気持ちなどです。wingsは羽。将来のためにひとりで旅立てる勇気や夢を持つことです。今、その腕に抱いている赤ちゃん、その子がいつかひとりで生きていけることができる勇気と知識を与えるのが、親の務めです。wingsは大事です。いつか子どもは自分で喜びながら独立し、飛べるようになることでしょう。大人になってから家(roots)に戻ること、会いに来ることもありますが、いつかはお子さんを離さなければならないのです。しっかりした子どもなら、きっと高く飛べるでしょう。
その時まで、お子さんを毎日抱きましょう。毎日耳を傾け、お子さんとの“会話”を楽しみましょう、絵本を読んだり、歌を歌ったり、笑うこと、泣くこと、踊ること、ものを作ること、空を見ること、自然に触れ合うこと、一緒に楽しく食べること、散歩すること…。できるだけ携帯はしまって、お子さんに向かってください。
携帯はいつでも使えますが、お子さんと会話したり目と目を合わせることはわずかの時間しかできません。とにかく楽しく、たくさんの思い出をどんどん作ってくださいね。自信を持って、失敗があっても失敗と思わないで、経験や体験としてとらえてみてください。経験することで、私たち親も子どもも変わっていきます。わからないことがありましたらどんどん聞いてください。

 

子どもはいちばんの宝物!

私の娘たちはもう大人になっていますが、今でも私は親になったことを幸せなことだと感じています。娘たちに感謝です。娘のおかげで私は“親”になりました。今まで、いろいろな仕事や経験、賞、タイトルなどたくさんもらいましたが、自分の人生にあるいちばんの宝物、大切なことは子どもを育てるということです。親になったこと。子どもを産んでよかった。幸せです。感謝の気持ちでいっぱいです。長い間本当にありがとうございました。
みなさんもこれから、すばらしい子育ての冒険を楽しんで、たっぷりと味わってください。自信を持って笑いながら、手をつなぎながら。いってらっしゃい!
Take care and I wish you every happiness!

 



4年間ありがとうございました!